私は、50歳を目前にして美容師免許を取得するべく、学校に入学しました。
「いつか、取得したい」とは思っていたものの、14年先延ばしにしていた美容師免許の取得を決めたのは、『白髪染めできます』と声を大にして、お客さまに伝えたかったからです。

◎ヘナの取り扱いと美容師学校入学の検討
私がヘナを取り扱いはじめたのは、2004年頃だったと思います。
当時はまだヘナの認知度も低く、”ヘナ頭皮パック体験会”としてお客さまに体験・体感いただく場を設けました。
また、それと同時にお客さまの体調や生活習慣に配慮し、適切なヘナの使い方をお伝えしてきました。
ヘナが頭皮にじんわりと浸透する心地よさや、ナチュラルな染め上がり、髪質の変化など、ほとんどの方に満足していただけたと自負しております。
さらにシャンプーやスタイリング剤の使用を抑えることで、皮膚トラブルのお悩みも解消できる、生活習慣の見直しから体調が改善したというお声もたくさんいただきました。
ヘナ頭皮パック体験会を通して、ヘナの品質の良さを体感していただき、多くの方にヘナを愛用いただけるようになったのです。
ヘナは、白髪をオレンジ色に染色します。
そこにインディゴを重ねることで、淡いブラウンから、ダークブラウンまで、お好みの色味に染めることができます。
また、染色回数を重ねることで、黒に近い髪色に近づけることもできます。
ヘナは髪の毛を”染色”するため、日本では、”染色行為”にあたります。
ヘナを広めていく仕事を続ける以上、どうしても美容師免許の取得が必要になりました。
すぐに美容師免許取得のため、美容師学校への入学を検討したのですが、当時は通信課程で2年の勉強と1年間の美容室勤務(インターン期間)を要しました。
仕事をしている以上、1年間のインターンはとてもネックに感じ、「美容師免許を取得したい」とは思いつつも、入学は先送りにしていました。
◎体験会実施の不安と美容師学校入学
入学を先送りにしていた私は、その後も、ヘナ頭皮パック体験会を通して、ヘナのリラクゼーション作用を多くの方に伝えました。
白髪染めは謳えませんでしたが、ヘナの良さを多くの人に届けたいという一心でした。
ヘナを探している人の中には、白髪染めによる髪のダメージを気にされている方も多いです。
必要としているお客さまへ、「ヘナであれば、ダメージが少なく染められますよ」と声を大にして言いたかったのですが、届けられないもどかしさを感じながら、仕事をしていました。
ヘナの良さを発信したいのに、肝心な部分を伝えられなくて、何となく嘘をついているような気分になったのを覚えています。
そんなモヤモヤとした時間が何年も続いた、2008年頃。
美容師免許取得の方法が変わり、3年間の通信課程修了後に美容師免許取得試験を受けることができるようになりました。
1年間のインターン期間がネックになっていた私にとって、朗報だったに違いありません。
しかし、その頃の私は、結婚を機に札幌から名古屋へ引っ越し、4年間の間に2回も転居をしました。
ありがたいことにヘナの卸先様も増え、正規代理店として順調に販売できていたので、「美容師免許は要らないかな」と感じ始めていた時だったのです。
取得しても”美容師”になる選択のない私にとって、3年間という時間と費用は大きなネックとなっていました。
また、美容師学校で学ぶ実技を活かせる場に行かないため、試験を受けるためだけの授業は無駄なのではないかと考えるようになりました。
結果、私はここでも美容師学校には入学せず、さらに先延ばし、年齢も重ねていくことになりました。
「美容師免許は必要ないだろう」そんな風に思い直して過ごしていた矢先、転居した鎌倉にて、思うように体験会が進まなくなってしまう経験をしました。
独身の時とは違って時間に大きく制約がある中、また環境が変わる中でも、なんとかやってきましたが、ここに来てモヤモヤとした感情が生まれるようになりました。
お客さまの喜んだ顔を見て、それを自身の喜びとしてきた私にとって、体験会は非常に大切なものでした。
その現場が上手くいかなくなるのは、何とも切なく、不完全燃焼な日々を過ごすことになったのです。
「ヘナパック後のお客さまの喜ぶ顔が見たい」、「もっと多くの方に髪の毛や頭皮をケアする癒しを提供したい」、「ヘナ専門のヘアケアサロンをやりたい」、そんな気持ちになり、ここでやっと一念発起して美容学校通信コースへの入学を決めました。
◎美容師学校で学んだ3年間
50歳を目前に挑戦した”学生生活”。
3年間は、本当に長いようで短く、私の人生のターニングポイントとなりました。
必要のない技術を学ぶことへの抵抗感、若い頃のようには動かない手先、四苦八苦したウィッグとの格闘も、今では懐かしい良い思い出です。
日本が戦後、徹底的に力を入れてきた”公衆保健衛生”。
それによって、国民の健康状態の改善、病気死亡率が減少してきたこと、公衆衛生に関わる重要な業務として、美容師法や理容師法が確立されてきた歴史なども学ぶことができました。
皮膚や人体の構造、衛生管理、消毒の方法、感染症対策、本当に多岐に渡る分野での学びを得られ、この年になっても、勉強する大切さを知ることができました。
大人になってからの資格取得は、決して簡単なものではないと思います。
私の通った学校は、美容師実技の内容に疑問は残ったものの、通信科のスクーリングが充実していたので、とても良かったと思います。
とは言え、多くの美容師学校がありますので、足を運んで自分の目で確認するのが一番です。
そのくらい学校選びが重要であるというのも感じました。
◎コロナ禍における今後の目標
コロナ禍の影響もあり、まだ、念願のヘナ専門ヘアケアサロンはオープンできていません。
介護など、生活との兼ね合いもあり、今のところはいつ動き出せるかも分かりません。
それでも、美容師学校へ通って学んだ日々、美容師免許を取得したことは一生の宝物になり、後悔などは一切ありません。
思い立ったが吉日、学びたい時に学ぶことが大切です。
何年も先延ばしにしていましたが、あの時入学を決めて本当に良かったと思います。
いつか、念願のヘナ専門ヘアケアサロンを開けるように、今できることをコツコツやっていきたいと思います。